友人と二人でバイク旅行に出る予定を立てたのだが、運が悪いことに直前に盲腸になり、入院してしまった。
「一人で行くのもなぁ」
と言っている友人に、
「今からじゃあ宿もキャンセル代取られるから、お前だけでも行ってこいよ」
と言って送り出した。
その日の昼過ぎ、友人からメールが来た。
「旅先でいい人たちに出会ったよ。また夜に写メ送る」
一人で退屈してるんじゃないかと心配していたので、少しホッとした。
さっそく返信した。
「良かったな。どんな人たちなんだ?」
返事はなかった。
その夜、約束通りに友人から写メがきた。
「田来岬(たこみさき)」
と書かれた標識が写っていた。
友人の姿も、一緒にいるはずの人たちの姿も写ってなかった。
ひょっとしたら相手は女の子かな?と思い、詮索するのはやめた。
次の夜にも写メが来た。
「崇呂崎(すろさき)温泉」
と、宿の看板が大きく写っていた。
「旅先で知り合った女と宿だとぉ〜!?」
と腹を立てたが、ひょっとしたらこれは自分をからかっているだけで、女なんかいないんじゃないかと思い直し、バカバカしいので返事もせずに寝てしまった。
写メには誰も写っていなかった。
次の夜にも写メが来た。
お坊さんの着る袈裟が写っていた。
どういうわけか雑誌の写真をわざわざ写しているらしく
「(ケサ)」
と活字が書かれていた。
なんかの暗号かな?と思い考えると、女と一緒にいるという設定でケサ→今朝……
しつこいヤツだなと呆れて
「もういいよ」
と返信した。
返事はなかった。
次の夜にも写メが来た。
「テレビ田来(たこ)」
の標識の掛けられた小さめの電波中継塔だった。
聞いたことの無いテレビ局だと思ったが、これは
「テレビ○○田来支局」
の○○と支局の部分が見切れているのだ。
田来ってことは、アイツは最初の場所に戻ってきてるのか?
帰るにしても別の場所を回ればいいだろうに…。連れの女となにかあったのかな?
気にはなったが、尋ねるのは負けのような気がして「仲いいね」とだけ返信した。
返事はなかった。
5日目の夜。
今度は写メではなくただのメールだった。
「 る!」
それだけだった。
「"る!"……???」
これはわからない。まいった。降参だ。
電話をかけてみた。呼び出し音は鳴るのに、友人は電話に出なかった。
それが最後のメールだった。
帰宅予定日を過ぎても、友人は帰って来なかった。
何日かして警察が来た。
友人は、旅先で知り合った人たちと集団自殺してしまっていた。
何か心当たりは無いかという警察に、あの奇妙なメールの話をしてみた。
死体になってしまった友人は携帯を所持していなかったので、この時まだ警察はメールのやりとりがあったことを知らなかった。
送られてきた奇妙なメールを見て、警察はため息をついた。
「なんで早く警察に知らせてくれなかったんだ!!!」