2178 名前:2ちゃんねるのどこか 投稿日:2010/01/01(金) 20:49:36
事故にあった。わたしと5歳になる娘は奇跡的に怪我もなく無事だったが、
妻が帰らぬ人になった。
妻は不思議な女性だった。何か物を紛失したときなど、妻はいつのまにか
どこからともなく見つけてしまう。先に起こることを知っているかのような
言動をすることもあった。
一度、娘が行方不明になったとき、わたしはあわてて警察に届けようといったのだが、
妻はいついつまでに帰ってくるから心配するなと言った。そして、その通りに
娘は帰ってきた。娘に何をしていたのか尋ねても、「おじいちゃんに会って来た」と
言うばかり。しかし、妻には身寄りがないし、わたしの父は既に亡くなっている。
そのときも妻は笑っているだけだった。
この旅行は、妻の提案によるものだった。列車の旅。妻は外の景色を眺め、
娘はわたしにもたれていた。不意に、妻がわたしの方に振り返って言った。
「あなたは強い人。大丈夫ね」
意味がわからず、何のことかと問い返そうとしたとき、事故は起こった。
妻の死に顔は眠っているようだった。わたしは、付き合い始めた頃のことを思い出す。
結婚してからはわたしを「あなた」と呼んでいたが、はじめはわたしを「お父さん」と
呼んでいたのだ。「お父さんはやめてくれ、呼ぶならお兄ちゃんにしろよ」
とよく言い合ったのを思い出し、涙がこぼれた。
事故にあった。わたしと5歳になる娘は奇跡的に怪我もなく無事だったが、
妻が帰らぬ人になった。
妻は不思議な女性だった。何か物を紛失したときなど、妻はいつのまにか
どこからともなく見つけてしまう。先に起こることを知っているかのような
言動をすることもあった。
一度、娘が行方不明になったとき、わたしはあわてて警察に届けようといったのだが、
妻はいついつまでに帰ってくるから心配するなと言った。そして、その通りに
娘は帰ってきた。娘に何をしていたのか尋ねても、「おじいちゃんに会って来た」と
言うばかり。しかし、妻には身寄りがないし、わたしの父は既に亡くなっている。
そのときも妻は笑っているだけだった。
この旅行は、妻の提案によるものだった。列車の旅。妻は外の景色を眺め、
娘はわたしにもたれていた。不意に、妻がわたしの方に振り返って言った。
「あなたは強い人。大丈夫ね」
意味がわからず、何のことかと問い返そうとしたとき、事故は起こった。
妻の死に顔は眠っているようだった。わたしは、付き合い始めた頃のことを思い出す。
結婚してからはわたしを「あなた」と呼んでいたが、はじめはわたしを「お父さん」と
呼んでいたのだ。「お父さんはやめてくれ、呼ぶならお兄ちゃんにしろよ」
とよく言い合ったのを思い出し、涙がこぼれた。
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