447 名前: おさかなくわえた名無しさん [sage] 投稿日: 2008/11/20(木) 11:56:52 ID:yqJJppYR
一昨年、初雪が降った日の夕方のことだった。
料理が趣味の自分は、ひさびさにじっくりと
食材の吟味し、買い物を楽しんでいた。
大きな荷物を持って駐車場までたどり着くと、
地方のショッピングセンターには似つかわしくないほどの
ドハデないでたちのあんちゃんが走ってきて呼び止める。
かつあげでもされるのかとビビっていたら、
あんちゃんはエビみたいに腰を曲げて深く頭を下げた。
「すみません。俺隣に駐車しようとして、
あなたのお車に傷をつけてしまいました!」
見れば、自分の車の側面にたしかにうっすら傷がついていた。
この寒い中、加害者のあんちゃんは2時間も車のそばで待っていたらしい。
あんちゃんは、そのまま逃げようと思えば逃げられただろう。
謝られるまで自分も気がつかなかったくらいの傷だから、
言われなければ、何日も経ってから「なんでここに傷がついてるんだろう?」
って思うくらいのものだっただろう。
448 名前: おさかなくわえた名無しさん [sage] 投稿日: 2008/11/20(木) 11:57:25 ID:yqJJppYR
モヒカン頭にはうっすら雪が積もり、唇は紫になっていて、
ふるえで歯の根が合わず、ときどき舌がもつれる。
そう裕福にも見えない青年が哀れになって
「うちの車、そんなに上等なもんじゃないし、
このくらいの傷どってことないよ。いいよ」と言ったのだが、
「いえ、それでは申し訳なさすぎます。
のちほど保険会社から修理に関する電話をさせます。
事故は警察に届けた方がいいと思います。電話してもいいですか?」
と、とさか頭を何度も下げながら謝った。
軽微な物損でけがもないことだし警察は面倒すぎるので丁重にお断りをし、
車の傷は保険屋と話し合うことにしてその場はおさめた。
修理をして車が帰り、事故に関する話が終わったころ、
あんちゃんはわが家に再び謝罪にあらわれた。
「いろいろご迷惑をおかけいたしました」と、
野菜やハーブ、果物と米に、つきたての餅まで持ちきれないくらいの食材を持ってきた。
聞けば、彼は近所で農業を営んでいるという。
親が寝込みがちなので、今は彼が中心で作物を作っているそうだ。
新たな試みとして、彼は無農薬や有機栽培に取り組んでいるところらしい。
彼が持ってきてくれた食材は肉厚で風味があり味が濃くすばらしかった。
変形モヒカン頭の彼のチャラい外見とは異なり、
農業を心から愛し、誇りに思い、真剣に取り組んでいることが
こちらの心に伝わってくる味だった。
この事故をきっかけに、自分は彼の畑から直接野菜を買い付けるようになった。
彼の野菜作りの腕前と人柄に惚れた自分は、
料理が趣味の人間、プロの料理人の友人などにどんどん紹介した。
彼は最近、自分の友人の経営する建物で朝市を開けることになったらしい。
今度、お祝いに行ってみようと思っている。
一昨年、初雪が降った日の夕方のことだった。
料理が趣味の自分は、ひさびさにじっくりと
食材の吟味し、買い物を楽しんでいた。
大きな荷物を持って駐車場までたどり着くと、
地方のショッピングセンターには似つかわしくないほどの
ドハデないでたちのあんちゃんが走ってきて呼び止める。
かつあげでもされるのかとビビっていたら、
あんちゃんはエビみたいに腰を曲げて深く頭を下げた。
「すみません。俺隣に駐車しようとして、
あなたのお車に傷をつけてしまいました!」
見れば、自分の車の側面にたしかにうっすら傷がついていた。
この寒い中、加害者のあんちゃんは2時間も車のそばで待っていたらしい。
あんちゃんは、そのまま逃げようと思えば逃げられただろう。
謝られるまで自分も気がつかなかったくらいの傷だから、
言われなければ、何日も経ってから「なんでここに傷がついてるんだろう?」
って思うくらいのものだっただろう。
448 名前: おさかなくわえた名無しさん [sage] 投稿日: 2008/11/20(木) 11:57:25 ID:yqJJppYR
モヒカン頭にはうっすら雪が積もり、唇は紫になっていて、
ふるえで歯の根が合わず、ときどき舌がもつれる。
そう裕福にも見えない青年が哀れになって
「うちの車、そんなに上等なもんじゃないし、
このくらいの傷どってことないよ。いいよ」と言ったのだが、
「いえ、それでは申し訳なさすぎます。
のちほど保険会社から修理に関する電話をさせます。
事故は警察に届けた方がいいと思います。電話してもいいですか?」
と、とさか頭を何度も下げながら謝った。
軽微な物損でけがもないことだし警察は面倒すぎるので丁重にお断りをし、
車の傷は保険屋と話し合うことにしてその場はおさめた。
修理をして車が帰り、事故に関する話が終わったころ、
あんちゃんはわが家に再び謝罪にあらわれた。
「いろいろご迷惑をおかけいたしました」と、
野菜やハーブ、果物と米に、つきたての餅まで持ちきれないくらいの食材を持ってきた。
聞けば、彼は近所で農業を営んでいるという。
親が寝込みがちなので、今は彼が中心で作物を作っているそうだ。
新たな試みとして、彼は無農薬や有機栽培に取り組んでいるところらしい。
彼が持ってきてくれた食材は肉厚で風味があり味が濃くすばらしかった。
変形モヒカン頭の彼のチャラい外見とは異なり、
農業を心から愛し、誇りに思い、真剣に取り組んでいることが
こちらの心に伝わってくる味だった。
この事故をきっかけに、自分は彼の畑から直接野菜を買い付けるようになった。
彼の野菜作りの腕前と人柄に惚れた自分は、
料理が趣味の人間、プロの料理人の友人などにどんどん紹介した。
彼は最近、自分の友人の経営する建物で朝市を開けることになったらしい。
今度、お祝いに行ってみようと思っている。
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