591 :おさかなくわえた名無しさん:2011/11/03(木) 20:02:27.58 ID:g5rysqqu
ちょっと上にバイクの話が出てたのと、時期的に近いのもあって昔の話を一つ。
10年ほど前、大学を卒業し、社会人として上京した最初の年。
知らない土地で周囲に気を許せる様な人もおらず、慣れない仕事に四苦八苦していた。
年末も仕事がぎっしり入っており連日残業、折角のクリスマスも職場を出たのは23時頃。
帰りにコンビニで買い物して外に出ると、雪まで降る始末。
いつまでも仕事で成果を上げられず、毎日目の前の業務に忙殺されて、
愚痴も相談も聞いてくれる人も見つけられず、
世間は浮かれている中自分は遅くまで残業して、さぁ帰ろうかと言う時に雪まで降って、
寒いやら惨めやら情けないやらで、建物の横の暗がりでしゃがみこんでしまった。
どれ位そうしていたか、突然眩しい光に照らされて思わず顔を上げた。
どうやらバイクが入ってきた様だが、よくよく見ると乗ってる人はサンタの格好をしている。
呆気にとられてついまじまじと見言っていると、それに気付いたかバイク乗りの方は
「メリ~クリスマ~ス」
とにこやかに声をかけてくる。以前呆然として声も出ない私。
「…おや、元気ないね。ちょっと待ってて」
バイク乗りの方はコンビニに入ったと思ったらすぐに出てきて、
「コーヒーとお茶、どっちがいい?あぁ、クリスマスプレゼントだから受け取って。しょぼいけど」
つられてお茶を頂いて一口飲んだ。じんわりと暖かかった。
「いや~クリスマスがなんだってんだよねえ」
「俺、予定もやる事も何もないもんだからさ、ついついこんなカッコでうろついてたんだ」
「そしたら街中での人気っぷりったら。プライベートはからっきしなのにね~」
と明るい調子で話し始めた。
彼の自虐を交えたジョークなんかもあり、ついつい噴き出してしまった。
そんな感じで暫く立ち話をした後、彼はヘルメットに付けていたサンタ帽をはがして、
「ゴミになる様だったら捨ててくれていいよ、手間かけて悪いけど。」
と私に被せて、
「お詫びと言っては何だけど、貴方が泣いていた理由を俺が持って行ってあげるよ、なんつってね」
と最後まで調子の良い感じで、バイクで走り去って行った。
帽子の中にはチロルチョコが2個入っていた。
592 :おさかなくわえた名無しさん:2011/11/03(木) 20:03:24.11 ID:g5rysqqu
それから、本当は帰郷する予定もなかったけど
何とか電車を手配して年末年始は実家で過ごし、また頑張ろうと心機一転、戻ってきた。
あの人の乗っていたバイクを知りたくて調べている内に、
段々と話せる人も増えていき、仕事も何とか回せつようになり。
なんだかんだで今では夫と2人の子供と平和に暮らせている。
子供にはサンタさんは本当にいるんだよ、会った事あるよと話している。
真赤なバイクに乗ったサンタさんに出会えたお陰で、今のこの幸せがあるんだと思う。
ちょっと上にバイクの話が出てたのと、時期的に近いのもあって昔の話を一つ。
10年ほど前、大学を卒業し、社会人として上京した最初の年。
知らない土地で周囲に気を許せる様な人もおらず、慣れない仕事に四苦八苦していた。
年末も仕事がぎっしり入っており連日残業、折角のクリスマスも職場を出たのは23時頃。
帰りにコンビニで買い物して外に出ると、雪まで降る始末。
いつまでも仕事で成果を上げられず、毎日目の前の業務に忙殺されて、
愚痴も相談も聞いてくれる人も見つけられず、
世間は浮かれている中自分は遅くまで残業して、さぁ帰ろうかと言う時に雪まで降って、
寒いやら惨めやら情けないやらで、建物の横の暗がりでしゃがみこんでしまった。
どれ位そうしていたか、突然眩しい光に照らされて思わず顔を上げた。
どうやらバイクが入ってきた様だが、よくよく見ると乗ってる人はサンタの格好をしている。
呆気にとられてついまじまじと見言っていると、それに気付いたかバイク乗りの方は
「メリ~クリスマ~ス」
とにこやかに声をかけてくる。以前呆然として声も出ない私。
「…おや、元気ないね。ちょっと待ってて」
バイク乗りの方はコンビニに入ったと思ったらすぐに出てきて、
「コーヒーとお茶、どっちがいい?あぁ、クリスマスプレゼントだから受け取って。しょぼいけど」
つられてお茶を頂いて一口飲んだ。じんわりと暖かかった。
「いや~クリスマスがなんだってんだよねえ」
「俺、予定もやる事も何もないもんだからさ、ついついこんなカッコでうろついてたんだ」
「そしたら街中での人気っぷりったら。プライベートはからっきしなのにね~」
と明るい調子で話し始めた。
彼の自虐を交えたジョークなんかもあり、ついつい噴き出してしまった。
そんな感じで暫く立ち話をした後、彼はヘルメットに付けていたサンタ帽をはがして、
「ゴミになる様だったら捨ててくれていいよ、手間かけて悪いけど。」
と私に被せて、
「お詫びと言っては何だけど、貴方が泣いていた理由を俺が持って行ってあげるよ、なんつってね」
と最後まで調子の良い感じで、バイクで走り去って行った。
帽子の中にはチロルチョコが2個入っていた。
592 :おさかなくわえた名無しさん:2011/11/03(木) 20:03:24.11 ID:g5rysqqu
それから、本当は帰郷する予定もなかったけど
何とか電車を手配して年末年始は実家で過ごし、また頑張ろうと心機一転、戻ってきた。
あの人の乗っていたバイクを知りたくて調べている内に、
段々と話せる人も増えていき、仕事も何とか回せつようになり。
なんだかんだで今では夫と2人の子供と平和に暮らせている。
子供にはサンタさんは本当にいるんだよ、会った事あるよと話している。
真赤なバイクに乗ったサンタさんに出会えたお陰で、今のこの幸せがあるんだと思う。
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