796 : おさかなくわえた名無しさん [sage] 2008/05/30(金) 01:34:53 ID:2rcLv5Mb
小学生になった頃、少し上の姉が「ケーキを買いに行こう」といい始めた。
俺はケーキが大好き。母親のお使いだ、ケーキが食べられると思ってついて行く事にした。
途中で姉はなぜか花屋で赤い花を一つだけ買った。
そして次にケーキ屋さんに行った。
俺はチョコレートケーキ!と指をさしたが、姉は首を振ると、「イチゴのショートケーキを一つ下さい」と店員さんに頼んだ。
俺は「なんでチョコにしないんだ!」とふてくされた。
しかも1個なんてみんなで食べるのに足りないじゃないか?
と文句を言っていたが、姉は俺に構わなかった。
店員さんは1個のケーキを小さな箱に入れて袋に入れて姉に渡した。
その時、姉が持っている赤い花に気付いたのだろう。
「ちょっと待って」と袋を取り戻すと、店員さんは今度は箱を綺麗な包装紙で包み、赤いリボンで縛ってくれた。
姉は夜、食事の後にそのリボンで結んだ箱を母親にだけ渡した。
その時の赤い花がカーネーションであることを俺が知ったのは数年経ってからだ。
その時の姉が小遣いで買った、小さなショートケーキは母と姉と俺とで三等分して食べた。
一口で、一瞬で無くなった味だが俺にとっては一生の思い出に残る味だった。
今でもショートケーキを食べると、中学生になる前に病死した姉の思い出の味がする。
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