子供は大きな猟銃を構えていた。

2010年1月11日月曜日 ·

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西暦200X年、ある村での話。
男と女、そしてその間にできた子供がいた。
男は女に惚れ、婿養子に村へ越してきたのだ。
村とはいえ、平成のご時世になれば、
男も女も町に車を走らせ、それぞれ違う会社に勤めていた。
しかし、男は会社と反りがあわず、家に帰ると酒を飲み
暴力という憂さ晴らしでで女をいじめていた。
ある日、男とその子供が大喧嘩をした。母をいじめるな、と。
男は憤慨した。憂さ晴らしができなくなればきっと自分は病むだろう。
男は実の子にも暴力を働いた。子供は必死に抵抗した。
ふと子供は思いつき、男の制止を振り払い納屋へ急いだ。
男は子供を追いかける。子供は納屋で何かを探している。
男の手が子供の肩に触ろうとする時、子供が振り向いた。
子供は大きな猟銃を構えていた。たじろぐ男。
そこに女が駆けつけ、子供を制止した。
「やめて!この人はあなたの父よ!何しているの!」
母は偉大。子供は銃を下ろし、男は頭を掻きながら寝室へ帰った。
もちろん暴力は止まない。むしろ男は銃の存在を知り、さらに調子付いた。
女はもう耐えかねた。男を裏山へ呼び出し、猟銃を差し出した。
「もういいわ、私を殺して。あなたに良心があるならば私を撃ったあとにあなたも私の後を追って。」
男は一瞬戸惑ったが、状況を把握し、そして了解した。
「でもどうか、あの子だけはいじめないでください。それが私の最後のお願いです。」
どうせこの女が死んでも、あの子供がいる。
この村で殺人が起きたとしても、互いに周囲数百メートルに他の家なんてない。
この村では猟が盛んだ。自分は猟はしたことはないが、
銃声なんて日常茶飯事だ。みんなは気にしないだろう。
それよりこの女と会うのも最期だ。
せめて目の前の女を自分が殺したという感触はできるだけ感じないようにしよう。
男は興奮を抑えつつ、冷静に、数メートル下がり、女の頭に向けて銃を放った。


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