その晩は雨が強く降っていた。

2010年1月12日火曜日 ·

Check
その晩は雨が強く降っていた。
現場に着き、トンネルの手前で車を脇に寄せ、一時停車。
その手の感覚は鈍いほうだが、不気味な雰囲気は感じた。
「恐い場所だ」という先行イメージのせいもあるだろうが。
しばらく休憩の後、ゆっくりと車を進めトンネルに進入開始。こういう体
験は 始めてなので、ワクワクするような妙な高揚感を感じる。友
人達もいい年して遊園地の乗り物を前にした子供のような表情で目を輝か
せていた。
それほど寂れた場所ではないとは思うのだが、後続の車は来なかった。
なので、スピードをかなり落として進んだ。何かが起こる事を期待しなが
ら。
しかし、特に何もおこらずトンネルの終端まで着いてしまった。
トンネルの壁などを観察していた友人たちも、別に妙なモノを見たわけで
はなさそうだ。
もう1度いってみよう、と提案が出て、皆賛成した。車をトンネルの端で
Uターンさせた。
今度も、何も起こらなかった。不満なので(と言うか、暇なので)何度が
往復してみよう、という事になった。
雨が強くなってきたのか、雨粒が車を叩く音がうるさくなってきた。
3,4往復ほどしただろうか、友人の1人が、「おい、もう帰ろう」と言
い出した。
何も変わった事も起こらず、飽きてきたのだろう、と思った。
だが、何か声の調子がおかしかった。トンネルの出口が見えるあたりで一
旦車を止め、後ろを振り向いた。
帰ろう、と言い出した友人は肩を縮め、寒さに震えるような格好をしてい
る。
もう1人は、その様子を見てキョトンとしている。
「え、どうした?何か見えたのか?」
と聞いたが、
「いいから、とにかくここを出よう」
と言う。
"何か"を見たのか?期待と不安で動悸が激しくなってきた。雨は一層酷
くなり、ボンネットを叩く音が耳ざわりに感じる。
とにかく、一旦ここを出て、どこか落ち着ける場所を探す事にした。
国道沿いのファミレスに寄り、ようやく一息ついた。
夏も近い季節だというのに凍えるように震えていた友人も、ようやく落ち
着いてきたようだ。
「なぁ、もう大丈夫だろ?何を見たんだよ」
「聞こえなかったのか?あれが」友人は怪訝そうな顔で僕達を見た。
妙な怪音の類か?それとも声?しかし、僕には心当たりはなかった。
もう1人の友人も、何が何やら、といった表情をしている。
「別になにも・・・まぁ、運転してたし、雨もうるさかったしなぁ。」
「聞こえてたじゃんか!」いきなり声を張り上げられて、驚いた。
深夜なのでファミレスにはほとんど人はいなかったが、バイトの店員が目
を丸くしてこちらを振り向いた。
しかし、彼がなにを言っているのか理解できない。
「何が聞こえてたって?はっきり言ってよ」
気恥ずかしさと苛立ちもあって、少し強い口調で言ってしまった。
しばらく重い沈黙が続いたあと、彼が口を開いた。


Related Post:


0 コメント:

現在の閲覧数 
モッピー | お金がたまるポイントサイト

About

このエントリをつぶやく
相互リンクについて
↑お気に入りに登録をお願いします
当サイトはリンクフリーです
人気ブログランキングへにほんブログ村 ネットブログへ
【↓1000文字まで】
Powered by NINJA TOOLS

過去 7 日間人気の投稿