冬山で遭難した登山者が見つかった時のこと。
捜索隊に加わっていた人から、こんな話を聞いたという。
遭難者はメモ帳に、死ぬ寸前まで日記をつけていたらしい。
日記の最後の方は飢えと寒さのためか、字が乱れていて読めたものではなかった。
しかし日記の最後に書かれた二行の文章だけは、はっきりと読むことができた。
おとうさん おかあさん もうかえれません ごめんなさい
たのまれたので かきました
まるで子供が書いたような下手な字で、平仮名だけが使われていた。
字は強い筆圧で書かれており、遭難者の書いた字体とは明らかに違っている。
遺族にメモ帳を渡す時には、最後の一行は破りとったということだ。
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