俺達以外の誰かが映っていた。

2010年6月12日土曜日 ·

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校二年の、確か夏休みだったと思う。
俺は家に友達を一人招いて、彼を一晩泊めた。実家だったけど親は結構そういうところ寛容だったから、騒ぎすぎなければそれで良かった。
んでまあ、ゲームするなりマンガ読むなりくっちゃべるなりして、気が付けば深夜になっていた。

そこでちょっと、コンビニ行こうかって話になった。

俺の実家は田舎にあって、最近やっとできた唯一のコンビニも家から徒歩で二十分くらいの場所にあった。
まあ、散歩も兼ねてってことで。
けどそうするには、一つ問題があった。
コンビニは国道沿いにあるけど、その道中には地元の警察署がある。
もし見つかったら、高校生の深夜徘徊ってことになる。俺らはDQNとかとは無縁なヘタレだったし、正直補導されるのは恐い。
ぶっちゃけビールなりチューハイとかも買うつもりだったし、帰りなんかに見咎められちゃ目も当てられない。

けれどそこは地元の強み、少し迂回した裏道を行けば警察署の前も通らなくて済むと知っていた。
そのコースで行こうってことで、二人で家を出た。

田舎だから、ちょっと裏に入れば街灯なんてほとんどない。俺らが通る裏道は真っ暗と言ってもよかった。
それでも慣れてるもんだから平気で進んで、コンビニ行って酒を買った。
レジは俺らと同じくらいに若いバイトだし、買おうとしたところで年齢なんぞ聞かれないのはもう知っていた。
滞りなく買い物を済ませたところで、もと来た裏道を引き返して帰途につく。

ところで、裏道を使ってコンビニと家を行き来するには、踏切を渡る必要がある。
帰り道、その踏切の何メートルか前までに差し掛かった時、俺は変なものを見た。
踏切前にあるカーブミラーに、俺達以外の誰かが映っていた。
ベージュ色の作業服みたいなものを着た、多分男。首から上はちょうど鏡の縁から外れていて、見えなかった。

まずい、と咄嗟に思った。
踏切前には弱々しい街灯が一つぽつんとあるきりで、ほとんど真っ暗と言ってもいい。
そんな状況で、男の姿とその服の色がめちゃくちゃはっきりわかった。そんなことあるわけがないのに。
俺は足を止めて、友人に「やっぱ表行こうぜ」と言った。
このままあそこを通ったらいけない気がする。直感だけど、そう思ったからだ。
友人はわけがわかっていないらしく渋ったが、半ば無理やりにコース変更につき合せた。
警察署の前を通っても何もなかったのは、まあ幸運だった。

帰った後、友人に理由を説明した。
もちろん信じるわけがなかった。
「んなわけねーだろ見間違いだよアホがwww」と言われたもんで、ひょっとしたら本当にそうだったのかなとも思った。
第一、自分自身でもよくわからないし信じられない体験だったのだから。

でもやっぱり、確認くらいは取りたいと思っていた。
何かの見間違いだったのだとしたら、まあ誤解されるような何かくらいはあるんじゃないかと。
なので、明るい状況でよく見てみるために、日があるうちに例の踏切にまで行ってみた。


そこには、カーブミラーなんて最初から無かった。


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