新人が入ってきた。47歳。警備業界では珍しくはない。
定年を迎えて、入ってくる新人も多いからだ。まぁ、新人は立たせておくのが一番いい。
無線を持たせて何か分からないことがあったら、連絡して来いと言って、ビルの外で立哨させておいた。
折りしも、外は小雪がちらついていた。
長時間ただ立っていると、色々なことを考える。夕飯は何を喰おうか?
今度の休みは何をするか?今までの人生。これからの将来。色々なことが頭を過ぎる。
契約先の人がヒョイと顔を出して、
「外に立っている新人さん、泣いているよ。具合が悪いじゃないの?」と言ってきた。
「何だ?」と思って見に行くと、本当に立ちながら泣いている。
通行人は泣きながら立っている警備員を呆れながら通り過ぎて行く人、怪訝な顔をする人、
笑う人、反応は様々だった。
「どうした?」と声を掛けると、やや間があってようやく振り絞るような声で一言。
「つらいです。」
よくよく話を聞くと、立っている間に今までの人生を振り返り、
何で俺はここまで堕ちてしまったのか?何で今、こんな所で罰ゲームのようなことをやっていなければならないのか?
そんなことを考えていたら、涙が溢れて止まらなくなってしまったそうだ。
結局、彼はやめた。
1 コメント:
身内に警備員がいる自分にとっては腹の立つ話だ
泣いて嫌がる程惨めな仕事だと言いたいのか
その偏狭なプライドのせいで前の仕事を
しくじったんじゃないのかと思ってしまった
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