577 1/22008/09/12(金) 11:36:10.59 ID:0+P8IssH0
朱川湊人 「昨日公園」
主人公は息子と共に公園に遊びに来ていた。
無くなったボールを取りに行く息子を見ながら、主人公は過去を思い出す。
小学生だった主人公は、友人と共にキャッチボールをしていた。
息子と同じように暴投してしまった主人公はボールを拾いに公園の外まで行った。
拾い終え、主人公は友人と別れた。それが最後の別れとなる事も知らずに。
その日の夜に、帰宅途中の友人がタクシーに轢かれてなくなったと聞かされた。
父と共に事故現場に行くと、地面に微かな血の跡があった。
主人公はひどく悲しみ、通夜にも行かず時間を潰し、
そして最後に友人とキャッチボールをした公園に行こうとした。
すると、公園からボールが転がってきた。ボールを拾い、公園に入る。
そこには死んだはずの友人がいた。時間が昨日に戻っていたのだった。
信じられない状況にとまどいながらも、友人を死なせずにすむかもしれないと意気込み、
主人公は友人を家まで送って行った。友人は無事に事故に会わずに帰れた。
だがその夜、またしても友人が死んだと聞かされた。
一度家に帰ってから頼まれたお使い先で、ダンプに轢かれたのだった。
父と共に事故現場に行くと、道路いっぱいにおびただしく血が広がっていた。
今度こそ友人を救わなければと主人公は思い、前回と同じ行動の末に友人に再会する。
家に帰ったらもうそこから出てはいけない、絶対にだと念を押し、また別れる。
だがやはりその夜に、友人が死んだと聞かされた。
家人が出ている間に火事が起き、友人は家ごと焼け死んだという。
自分が救おうとすればするほど友人の死に方が酷くなっていっている。
今度こそ確実に助けなければと、憔悴しながら主人公は思う。
578 2/22008/09/12(金) 11:36:46.92 ID:0+P8IssH0
また過去に戻った主人公は、泣きながら友人にすべてを話す。
自分は未来から来ている事、どうにかしないと友人が死んでしまうという事。
ボールを取りに帰っただけなのにひどく疲れ切り泣き腫らした主人公の顔を見て、友人はそれを信じる。
事故にも火事にも気をつけるよと友人は誓う。
安心したのも束の間、またしても友人が死んだと聞かされた。
今度はガス漏れで、友人だけではなく幼い妹も亡くなったという。
過去に戻る主人公。そのやつれ果てた顔に友人は驚く。
だが主人公はなにもわけを話さず、ただ一言訊ねた。
「お前の一番大切なものはなんだ?」
「俺は兄ちゃんだから妹が一番大切だなあ」
友人はそう胸をはり答える。もうどうしようもない、主人公は何もせずに帰った。
やがて友人がタクシーに轢かれて亡くなったと聞かされた。
主人公は友人の通夜に出た。それきり過去には戻らなかった。
息子がボールを片手に戻ってきたので、主人公は回想を終える。
どこか息子の様子がおかしい。
いつもは憎まれ口ばかり叩く息子が、おびえたように主人公を見上げる。
その表情から主人公は全てを察する。息子もかつての自分のように戻ってきたのだと。
そしてこれから自分の身になにかが起こり、息子はそれを阻止しようとがんばっているのだ。
「もうお父さんのためにがんばらなくてもいいんだよ」
そう言う主人公に、号泣しながら息子は抱きついてきた。
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