長年連れ添った仲の良い老夫婦がいた。
「片方が先に死んだら、さみしくないように壁に埋めよう」
と言い交わしていたが、しばらくして婆さんが先に死んだ。
爺さんは悲しみ、約束通り婆さんの死骸を壁に埋めた。
すると、ことある事に壁の中から「じいさん、じいさん…」と婆さんの呼ぶ声がする。
爺さんは、呼ばれるたびに「はいはい、爺さんはここにいるよ」と答えていた。
ある日、どうしても用事で出かけなくてはならなくなり、村の若い男に留守番を頼んだ。
男が留守番をしていると、壁の中から婆さんの声がする。
「じいさん、じいさん…」
最初のうち、男は答えていた。
「はいはい、じいさんはここにいるよ」
けれどしかし、婆さんの声はなんどもなんども呼びかける。
「じいさん、じいさん…」
男は耐えきれなくなり、叫んだ。
「うるせえ! じいさんはいねえよ!」
すると壁の中から鬼の形相をした老婆が現れ
「 じ い さ ん は ど こ だ …!」
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