ありがとう、約束だよ……破ったら貴方も落ちて ね?

2010年2月19日金曜日 ·

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終電車の中で眠ってしまい目を覚ますと、見知らぬ女性が俺の肩に頭を乗
せてもたれかかるように眠っていた。
見ると黒髪ロングでかなりかわいい。貞子とかの不気味な黒髪じゃなく、
綺麗な感じ。
正直言って悪い気はしなかったので、しばらくそのまま乗っていた。俺の
降りる駅はまだ先なので大丈夫だろう。



二駅、三駅を過ぎ車両には俺と、俺にもたれて寝ている女性の二人だけに
なった。
彼女はどこで降りるんだろう、起こしてあげた方がいいかな……そう思っ
た俺が体を動かしかけると、
「動かないで……」
と、目を閉じ頭を肩に乗せたまま女性が言った。
さらに続けて、
「もう少しこのままでいたいな……」
って。初対面の人に言われて不思議だったけど、女の子にそんなこと言わ
れて理由を聞くほど俺は野暮じゃない。黙って肩を貸してやった。
でもさすがに自分の降りる駅が近づくと心配になってきてさ、とりあえず
「どの駅で降りるの?」と聞いてみた。
すると「落ちる駅?」と返してくる。
「違うよ、落ちる駅じゃなくて降りる駅」
「降りる駅が落ちる駅だよ」
また意味不明な答え。さらに彼女は「貴方の降りる駅が、私の落ちる駅」
と続けた。
ひょっとして、自殺でもするんじゃないかと思ってさ。この娘は俺の降り
た駅で飛び降り自殺をするんじゃないだろうか?
どうしても気になったので、彼女に「落ちちゃいけないよ」と言ってみ
た。
すると彼女は「貴方が降りたら私は落ちる」と脅迫めいたことを言ってく
る。仕方がないので「じゃあ降りないよ」と言ってあげた。
彼女は嬉しそうに、「ありがとう、約束だよ……破ったら貴方も落ちて
ね?」と言う。
この言葉に俺はゾッとしたが、今は彼女を落ち着かせることが優先だ。自
殺を食い止めたい一心で、俺は「わかった、約束するよ」と言った。
そのとき、電車が揺れた。
そして彼女の方を見た俺は、彼女の不可解な言動のすべてを理解した。
しかしもう遅い。
降りたら彼女は落ちる、そして俺もまた落ちるのだから。


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