25年前の熱い夏の夜、パートに出ていた母親が珍しく残業になり、
代わりにばあちゃんが晩ご飯を作ってくれた。
ちょっと痴呆が始まっていたばあちゃんは頑張ったんだと思う。
味噌汁と、厚揚げとなっぱの炊いたんだけの地味なもので、
当時9歳だった僕にはつまらないメニューであり、テレビを見つつダラダラ食べた。
ろくに礼も言わず風呂に入り寝てしまった。
次の朝、ラジオ体操に行くつもりが、寝坊したので不貞腐れながら階段を降りると
母親が目を真っ赤にして泣いている。
父親は知らない人と話している。
アレ何かヘンだ。ばあちゃんは?
ばあちゃんは?
客間で寝ていた。
いや、正確には寝かされていた。
鼻の穴に綿を詰められて。
夜中にぼけて一人で風呂に入ってしまい、心筋梗塞で死んでしまったらしい。
ばあちゃんの作ってくれた最後の料理、もっと味わって食べれば良かったと思った。
それ以来、僕は飯を食う時にはテレビを消すようになった。
5歳の娘は不満そうだが、彼女が9歳になったらこの話を教えてやろうと思う。
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