金婚式を迎えた老夫婦が、夕暮れ時のレストランで結婚記念日をつつましく祝っていた。
夫が妻の方に体を傾け、優しく話しかけた。
「ねぇ、いい機会だから、ひとつ尋ねておきたいんだ。ぼくたち結婚したとき、
家族で野球チームを持とうじゃないか、と誓ったのを覚えているかい?」
「もちろんだわ、ハニー」
「でも、ひとつだけ気にかかっていることがあるんだ。九番目の末の息子、
サミーが一人だけ他の兄弟とは身長や風貌がまるで違っているのに、おまえは気づいていたかい?」
「これからする質問の答は、今までのわたしたちの幸せな結婚に
波風を立てることになるかもしれない。それでも、ぼくは真実を知りたいんだ」
夫は意を決したように言った。
「・・・九番目の末の息子は、父親が違うんじゃないかい?」
それを聞いた妻は驚いたように夫を見つめた。
そう、そうなのだ、夫は知っていたのだ・・・。
長い長い沈黙のあと、妻はようやく重い口を開いた。
「ええ、そうよ。九番目の息子の父親は別の男よ」
夫は予想していたこととはいえ、その事実に打ちのめされ、胸が張り裂けんばかりだった。
目に涙を浮かべながら夫は妻に問い詰めた。
「いったい、誰、誰なんだ? 九番目の息子の本当の父親は?」
妻は再び頭をうなだれて沈黙してしまったが、必死に勇気を奮い起こし夫に告げた。
「それはあなたよ」
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