ワシントン大学での英語学序論の期末試験でのことである。
このクラスは800人も学生がいたので、1年生の他の多くの科目と同じく、
この試験も新しい学生を振り落とすためのものだった。
試験は2時間で、問題用紙が配られた。
教授はとても厳しい人で、
きっかり2時間後にこの机の上に提出しないと受け取らないこと、
従って試験には落ちることを学生たちに言い渡した。
試験が始まって30分後、1人の学生が息せき切って駆け込んできて、
教授に問題用紙を下さいと言った。
「もう最後までやる時間はないと思うがね」
と教授は用紙を渡しながら言った。
「いえ、やります」
とその学生は答えると、席についてやり始めた。
2時間後、教授が試験の終了を宣言すると、
学生たちは列をなして答案を提出し、出ていった。
後には、遅刻した学生がただひとり残って、書き続けた。
30分後、机に向かって次の授業の準備をしていた教授のところに、
その学生がやって来た。
彼は机上に積み上げてある答案用紙の上に、自分の答案を置こうとした。
「駄目、駄目。受けとれんよ。もう、時間切れだ」
学生は不信感と怒りを露わにした。
「先生は私が誰だか御存知ですか?」
「いいや、どなた様か知らんね」
と皮肉な口調で答えた。
「先生は私が誰だか御存知ないのですか?」
と再び学生が聞いた。
「知らんね。関係ないだろう」
と高圧的な口調で教授が答えた。
「分りました」
と学生は答えると……
答案用紙の山をさっと持ち上げ、
素早く自分の答案用紙をその中ほどに差し込んで教室をでていった。
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