柏木涼子は毎日、手紙をもらう。

2010年3月14日日曜日 ·

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柏木涼子は毎日、手紙をもらう。
  毎日、同じ女の子から。
  毎日、校門の前で。
  毎日、まったく同じ内容の手紙を。
 『ぜんりゃく

  って、堅苦しいあいさつは抜きにしまして
  たぶん、怒ってるよね?
  いっぱい、意地悪したもんね。

 こっそりノートを破いたり、
  ロッカーにネズミの死骸を入れたり…
  しかたないよね、酷いこといっぱいし
  てしまったものね。
  やめるよ、もうあんな事。もう二度とやめ
  るから、許してください。
           智恵美』

 涼子と智恵美の確執は、ある男子生徒との恋愛から始まったものだった。
  その男子と涼子は恋人同士となり、智恵美は恋に破れた、という訳だ。
  それから、智恵美の嫌がらせが始まった。

 ロッカーにネズミの死骸を入れられたり、カバンの中にカミソリを入れられたり……
  誰かに、校舎の二階から赤い絵の具の水をかけられた事もあったが、これも智恵美だろう。

  しかし、突然、嫌がらせが無くなり、智恵美が校門で手紙を渡すようになった。

「ねえ、仁科さん。もういいから。もう分かったから」
  涼子はそう言うのだが
「お願い!手紙を受け取って。私の気が済まないから。本当に悪いと思ってるの!!」
  智恵美にそう言われ、仕方なく涼子は毎朝、手紙を受け取るのが日課になってしまった。

 しかし、智恵美から手紙をもらい始めたのと同じ頃から、体調が悪くなっていった。

 涼子は気味が悪くなってもらった手紙を全て燃やした。
 その日から体調が次第に良くなっていった。
 それと同時に、智恵美は姿を見せなくなっていった。


それから数日後。
  涼子は、ふと引き出しの隅に、智恵美の手紙が一通だけ残っているのに気が付いた。
  何気なく手紙を手に取った涼子は、思わず悲鳴をあげた。
  呪いの正体が分かったのだ。

 怨念のこもった部分。
 たった一行。


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