賽の河原の子供たち

2010年3月11日木曜日 ·

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116 名前: ◆PDh25fV0cw [sage] 投稿日:2009/12/13(日) 23:04:22 ID:jLrgnZcU
『賽の河原の子供たち』
三途の川のそのほとり、賽の河原と呼ばれる場所。そこで子供たちが石を積み上げている。
親より早く死んだこの子供たちは、その罪を購うために石の塔を完成させなければいけないためだ。しかし、塔が完成間近になると、毎回棍棒を持った鬼がやって来て、石の塔を壊してしまう。

子供たちは壊されないように抵抗するが、鬼は不思議な力があるのか、触れることができない。
泣きじゃくる者や、怒る者、呆然とする者など様々な反応をする子供たち。まだ幼い子が多いのか、その反応はことさら大きく、静かな川辺をざわめかせる。
鬼は塔を壊し終わると、その子供たちをあざ笑うかのような哄笑を残し、霞のように消えさっていく。
鬼が消えた後、子供たちはまた石を積み始める。今度は子供たちなりに頭を使い、複数の塔を同時に建て始め、一つ二つ鬼に壊されてもいいようにした。
しかし、完成間近になったとき、今度は鬼も複数になって現れた。無惨に壊されていく塔たち。それは、鬼が子供の浅知恵を嘲笑っているかのようだった。
毎回、毎回壊される塔。その内、ほとんどの子供が積むことを諦めてしまった。そんな中、一人の少年が、また塔を積み始めた。
回りの子供は、皆諦めた表情でそれを見ていた。案の定、その塔は完成間近で壊されてしまう。
だが、その少年は壊されても、壊されても、塔を積むことをやめようとはしなかった。
そのうち、一人の子がその少年に問いかけた。
「そんなことをしても無駄さ。また、壊されてしまうだけだよ」
「壊されてもいいさ。それよりも、今度は丸い塔ができたよ」
よく見てみると、その塔はたしかに円錐状になっていた。
「前回は四角い塔、その前は三角の塔。塔を作るの、楽しいよ」
少年はその汚れた顔に、あどけない笑顔を浮かべながら、本当に楽しそうに答えた。
塔を作ることを楽しむ。完成させることばかりに気をとられ、他の子供たちはそんな簡単なことを忘れていた。
塔を作る者、見て楽しむ者、次の塔を考える者。それぞれの楽しみ方で、子供たちは塔作りに熱中しつづけた。
鬼は塔を壊すことはできても、子供たちには触れることができない。鬼は楽しそうな子供たちを見て、地団太を踏むことしかできなかった。
ここは地獄の入り口、賽の河原。子供たちの楽園だ。



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