あの日泣いていた爺ちゃんの姿は忘れられない。

2010年3月26日金曜日 ·

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俺が子供の頃、たぶん小学校低学年ぐらいだったと思う。
ある日、学校から帰ると母親が居なく、家には婆ちゃんと爺ちゃんだけだった。
婆ちゃんが言うには、母親は買い物に出かけたらしい。父親はもちろん会社だ。

おやつを食べ終わり、庭で遊んでいると、見たことの無い実をつけた木があった。
婆ちゃんに聞くと「そんな物が食べたいのけ?棒でつついて落としてみぃ」
と言うので、その実を落として婆ちゃんのところへ持っていった。

「あんまり美味しかなかろ?戦争中は食べ物が無かったけ、こんな物でも食べたもんだ」
みたいな事を婆ちゃんは言っていた。
俺は婆ちゃんが言うほど不味くなく、むしろ甘くて美味しかった。
そこで「爺ちゃんも食べるかな?」そう言って俺は爺ちゃんの所へ持って行った。

「爺ちゃん!これ美味しいよ!」
俺は爺ちゃんの目の前でその実を食べた。
そうしたら爺ちゃん、突然怒り出し、婆ちゃんを大きな声で呼んだんだ。
「こんな物をどうして○○(俺の名前)に食わせるんだ!!」

婆ちゃんはそっとその実を俺の手から取り上げ、
「こっちおいで、こんな物より旨いもんあっから」と婆ちゃんは俺の手を引いた。
その部屋を出る時に振り返ったら、爺ちゃんてっきり怒っていると思ったら、
静かに泣いていたんだよ。
あの日泣いていた爺ちゃんの姿は忘れられない。


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