末期ガンの患者が入院していた。

2010年1月29日金曜日 ·

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ある病室に2人の末期ガンの患者が入院していた。一人は窓側のベッド、
もう一人はドア側のベッド。
2人とも寝たきりの状態だったが、窓際のベッドの男はドア側のベッドの
男に窓の外の様子を話してあげていた。
「今日は雲一つない青空だ。」
「桜の花がさいたよ。」
「ツバメが巣を作ったんだ。」
そんな会話のおかげで死を間近に控えながらも2人は穏やかに過ごしてい
た。
ある晩、窓際のベッドの男の様態が急変した。自分でナースコールも出来
ないようだ。
ドア側の男はナースコールに手を伸ばした。が、ボタンを押す手をとめ
た。
「もしあいつが死んだら、自分が窓からの景色を直接見れる・・・」
どうせお互い先のない命、少しでも安らかな時をすごしたいと思ったドア
側のベッドの男は、自分は眠っていたということにして、窓側のベッドの
男を見殺しにした。 窓側のベッドの男はそのまま死亡した。
晴れて窓側のベッドに移動したドア側のベッドの男が窓の外に見たのは、
打ちっ放しのコンクリートの壁だった。


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