155 :本当にあった怖い名無し :2007/03/04(日) 22:29:33 ID:+8vYw1MDO
俺に父はいない。
俺と双子の妹が生まれるずっと前に癌にかかり、俺たち兄妹が生まれて暫くしてから亡くなったらしい。
俺たち兄妹も小学生になったある日。学校から帰ってのんびりしているときに隣家で火事、あっという間に俺たちの家にも火は燃え移った。母は仕事でいなかった。
妹の手をとり部屋から脱出しようしたが、ドアノブが火の熱によって溶かされ出れそうにない。(このとき俺は右手を火傷した)部屋は二階だし、窓から脱出しようにも出来るわけがない。
俺は助けが来るまで、熱から妹を守るため布団で妹を包み必死にだきしめた。ただ、俺も妹も限界に近い・・そんときだった。誰かが俺の体を包み込んだんだ。
俺たちは無事助かり、どういう経緯で家から脱出したかは覚えてはいない。
156 :本当にあった怖い名無し :2007/03/04(日) 22:31:21 ID:+8vYw1MDO
ただ微かに覚えてるのはグシャグシャ泣き顔の母。
それとあの火事のなか「手、痛いだろ・・偉いぞ。男の手は愛する人を守るためにあるんだ。」て言葉と、ずっと誰かが抱きしめててくれたこと。
確かその人は坊主頭でちょっとたれ目、左目の下には傷痕があった。
後々大きくなった俺たちに、母から父の手紙をもらった。それと俺たちが生まれて間もない頃だろう、家族写真が何枚か入っていた。
ありがちな展開だけどさ。写真の中で笑う父は、坊主頭でちょっとたれ目、左目の下に傷痕があった。
薄くて誤字だらけの手紙は読むのがやっとで、手紙の最後にはこう書かれてた。「男の手は愛する人を守るためにあるんだ。おばけになっても、俺は家族を守る。」
俺に父はいない。でも俺にとって父は偉大で、大切なことを教えててくれた。
妻と、もうすぐ生まれる子供をこの手で守っていくよ、あなたを見習って。
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