いつもの客
ちなみに、僕の父はお坊さんなんです。
家も、寺と普通の家とで二つあります。
もちろん、いつもは普通の家で暮らしています(父は、ほとんど寺で働いている)。
寺の近くには、墓がかなりの数、並んでいます。個人情報だけど、あまり関係ないんで!
僕は、小さいころから父さんと遊ぶのが好きだった。
多分、父さんとはたまにしか会えないから、さびしかったのだろう。
まぁ、今となっては、父が大っ嫌いなのだが…
本題に戻るか。
近くに墓地があるとはもう話した。 トイレには窓があり、その窓からは墓地が見える構造になっている。
小さい時、何年前だろうか… 窓越しに、人影、いや、「もの」かもしれない。
そんなのを見た。 夜だったからだろうか。 「もの」は、何となく黒い塊にも見えた…
墓だから、もちろん、墓参りをする人も来るわけで、僕はその時は、
「あ、またお客さんが来てる…」
程度にしか思いませんでした。
気づいてたはずなのに、なぜ理解しようとしなかったのだろう。
「黒い客」には、足がなかったのに…
翌日の夜、同じ「黒い客」が来ていた…
その次の日、またその次の日も…
だんだん僕は怖くなった。 日に日に「黒い客」はこちらに近づいて来ているのだ…
しかし、ある日、「黒い客」は来なくなった。
僕は、ほっとしていた。呪いから解き放たれたかのような安堵感を覚えた…
しばらく経てば、そんなことは忘れていた…
いや…「忘れた」のではなく、「認めたくなかった」のだろう…
僕は、友達と一緒に寺の近くの森で遊んでいた…
大体10〜15人ぐらいだったろうか…
しかし、一人だけ見慣れない子がいた。
僕は、
「お客さんの子供かな?」
と思い、その子も仲間に入れてあげた。
みんな夢中になって遊んでいて気付かなかったのだろう。
もうすっかり空は茜色に染まっていた…
そしてその夜…
僕はトイレに行った…
墓のほうを見ると、小さな女の子がひっそりと立っているではないか…
よく見ると、その子の周りに、黒い煙がもくもくと立ち昇っている。
僕は、一瞬、火事だと思ったが、その子は平然とした顔で歩いてくる。こっちに…
僕は怖くなりトイレの部屋から飛び出した。
「あの子…!!!」
思い出した。昼間一緒に遊んだ子を。そして、記憶をたどると、二人の顔、黒い客が頭に浮かんだ。
あの子の家族に聞くと、双子の娘がいたが、姉のほうは行方不明になったらしい。
それを聞いた僕は確信した。
「黒い客」はその女の子だと。
だが、なぜ家に? そもそも、あの子はお客さんのところの子だ…
そう思ったが、証拠がない…
そんなことを考えているうちに、もう夜になった。
そしてトイレに。 僕は内心気にしていなかった。もう怖くはなかった。
どっからでもかかってこいと思ってた。
しかし、目の前の現実を相手にそんなことは言ってられなかった。
黒い客は、どんどん近づいてくる。
今気付いたが、「黒い客」の周りの煙は、無数の腕だった…
そして、彼女はこう言った。「…ぁ…しを…つけ…く…さい…。」
しばらく経ち、ニュースで、
「●●川付近で、少女を発見。 命に別状はなく…」
それ以来、「黒い客」は現れなくなった。
しばらくしてその子に会いに行ったが、僕のことは知らないらしい。
しかし、僕にははっきりと見えていた。
あの子の体中に、何かに強く巻きつかれたような跡があったのを…
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